1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 02:32:29.32 ID:LzSmaR7I0
僕がもっとも輝いていた時間、それは幼稚園の頃だろう
あれから20年、僕が描いていた未来はそこにはなかった
裕福な家庭で誰よりも立派な教育を受け、誰よりも優れていたはずの僕だった
だけど、僕にとって大人の世界は辛く厳しかった
気付けば僕は自分の部屋に引き篭もり、外の世界から僕自身を隔離したのだ……
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 02:42:43.71 ID:LzSmaR7I0
「トオルちゃん、ご飯よ」
ドアの外からママの声がした
しかし僕は返事を返さない、返せない
「ご飯、置いておくわね」
しばらくするとママはそう言い、僕の部屋の前を後にした
もう1年ママの顔を見ていない
僕はご飯を取りにドアへ向かった
静かにドアを開ける
するとリビングから聞こえるママの声に気付いた 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 02:49:32.77 ID:LzSmaR7I0
「まさかトオルちゃんがニートになるなんて……」
僕の胸に何かが突き刺さった
違う、僕はニートじゃない
僕は少し躓いてしまっただけなんだ、ママ
今までずっと見てきてくれたじゃないか
塾も頑張った、受験もトップで受かったよ
僕のプライドは、ニートである僕を認められなかった 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 03:16:02.76 ID:LzSmaR7I0
でも僕は自分の弱さは理解していたんだ
幼稚園の頃からみんなのまとめ役として頑張ってきたけれど
家ではべったりママに甘えていた
僕だってみんなと一緒さ
幼い頃から期待されている中で、僕は子供らしくいることができなかった
もっと子供らしくありたいと願っていたんだ
それがよくなかったのだろうか、我慢していた気持ちが大きくなってから爆発したんだ 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 03:23:18.88 ID:LzSmaR7I0
大学3年の頃
僕はとある有名大学に通っていた
就職活動も早い段階で大手を勝ち取るつもりだった
人生で一度も失敗した事がない僕は、就職活動も単純に考えていたんだ
しかしそれは甘かったらしい
僕は大手企業を次々と落ち、落胆した 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 03:35:51.91 ID:LzSmaR7I0
これで大手の駒は残りひとつ
僕は絶望へ片足を奪われるような心境に陥っていた
「風間君?」
ある日の帰り道、僕は懐かしい顔を見かけた
「あれ、ねねちゃん?」
「やっぱり風間君だったんだ!」
僕等は束の間の再会を喜んだ
「久しぶりだね。みんな元気かい?」
僕の何気ない会話に、ねねちゃんは一度視線を逸らした
「き、きっと元気よ!それより風間君もシュウカツ?調子はどう?」
「あ、ああ……大手なら3社ほど2次選考まで通ってるよ」
「すっごーい!さすが風間君だね!」
僕は見栄を張ってしまった
残り一駒確実に決めなければ僕……
その時はまだ気付いていなかった
ねねちゃんが視線を逸らしたその意味を
そして、そこから僕の歯車は崩れ始めていた 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 03:50:07.78 ID:LzSmaR7I0
ちなみに大学3年の頃ってところで20年後から過去に戻ってるっていう設定な 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 03:49:36.13 ID:LzSmaR7I0
最後の一駒は、順調に最終面接まで進む事が出来た
電車を乗り継ぎ目的の駅で降りる
予定より押してしまった
「ひえー、遅れちゃったよー!」
僕は急いで目的地へ向かう
僕はそこでアイツに再会したんだ 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 04:00:44.52 ID:LzSmaR7I0
最終選考はグループ面接だ
僕は急いで目的地へ向かうが、信号につかまってしまった
「ほっほーい風間くーん」 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 04:03:16.11 ID:LzSmaR7I0
僕は声のする方角へ目をやった
「しんのすけ?!」
「おひさしだぞ」
「お前どうしたんだよこんなところで」
「カーチャンがお仕事しなさいっていうから、面接受けにきたぞ」
「大丈夫かあ?で、どこ受けるんだよ」
「あそこ」 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 04:12:29.33 ID:LzSmaR7I0
しんのすけの指差す先はまさに僕が今から最終面接を受けようとしている会社であった
「じょ、冗談だろ?」
「ほんとダゾ?りくなびってやつに載ってたゾ」
「まさお前も最終面接じゃ……」
「あ、風間君青になったゾ」
「待てよしんのすけー!」 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 04:22:03.70 ID:LzSmaR7I0
しんのすけを追いかけていくうちに僕は会社に到着した
「すみません。私○○大学の風間トオルと申します。本日は最終面接に参りました。」
僕は受付を済ませた
そしてしんのすけも僕に続いた
「おら野原しんのすけ!りくなびで見てきたゾ!」
一瞬にして辺りが静まり返った
僕は確信した
やはりしんのすけだと 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 04:38:37.54 ID:LzSmaR7I0
受付嬢はクスクスと笑い出した
それでもしんのすけは物怖じしていない
僕は他人のふりをして慌てて待合室へ向かった
「あ、風間君まってよー」
「あなたの事なんて知りません!」 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 04:44:17.24 ID:LzSmaR7I0
待合室には僕とグループ面接をするのであろうメンバーが揃っていた
「お、おはようございます」
僕は極度に緊張してしまった
ここを落ちてしまえば大手はお終いだ
「風間君風間君、オラ初めてだから優しく教えてくれる?」
「遊びじゃないんだぞ。それにお前エントリーすらしてなかったじゃないか……今すぐ帰るんだ」
「でも……オラこのまま帰ったらカーチャンに叱られちゃう」
「そんな事言ってもここにいても仕方ないだろう……あ、おはようございます」
しんのすけと会話をしていると、人事担当が入ってきた
「皆さん、お待たせいたしました。それでは参りましょう」 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 04:53:05.39 ID:LzSmaR7I0
「しんのすけ、こうなったらばれない様に黙ってろ」
「ほうほう、わかった」
僕等は会議室に通された
「よくぞ来てくれた。これが君たちの最終面接だ」
そこには社長と数人の部下が並んで座っていた
僕等は順番に用意された椅子の前に並ぶ
(あれ?)
僕の分の椅子がない
しんのすけがいる分、最後に並んだ僕の分の椅子がなかった
「どうしたんだ、椅子が足りないじゃないか」
「申し訳ありません、こちらをどうぞ」
人事担当が慌てて椅子をひとつ用意してくれた
「風間君恥ずかしいゾ」
しんのすけが小さな声で呟く
「……(お前のせいだよ)」
「ではどうぞ掛けてくれたまえ」
僕等の面接はスタートした 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 04:58:14.41 ID:LzSmaR7I0
僕等に言い渡されたテーマは「社会人として必要なもの」であった
始めは積極的に口を開いていた僕であったが、段々と話についていけなくなってしまった
僕とまったく感性が違う
というよりも、彼等の意見はまさに企業にとって都合のいいものばかりであった
僕は早くも目の前が真っ暗になり始めていた
「おらはみんなが楽しければいいと思う」
僕を除いて順調に進む中、しんのすけが突然口を開いた
(しんのすけ、あれほど黙ってろって言ったのに……) 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:00:30.83 ID:LzSmaR7I0
「おら、カーチャンとトーチャンとヒマワリとシロがいれば十分だぞ」
しんのすけは自信たっぷりにそう答えた
その姿に回りはクスクスと笑い始めた
受付嬢のあの笑いとそっくりだ
僕は悟った
彼らはしんのすけを見下しているんだな、と
「あ、あとキレイなおねーさんも」 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:04:18.29 ID:LzSmaR7I0
(馬鹿かしんのすけのやつ)
僕は心の中でしんのすけにつっこみを入れた
社長は怪訝そうな表情を浮かべている
「後、風間君もだゾ」
「え?」
「ねねちゃんもそうだし、ぼーちゃんも、まさおくんもだゾ」
僕は思わず緊張を忘れ、しんのすけの言葉を聞いた
「みんな会わなくなっちゃったけど、オラにとって必要な友達だゾ」
「しんのすけ……」 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:05:52.87 ID:LzSmaR7I0
「人事、誰だあんな低脳をここまで上げた奴は」
社長はしんのすけを指差し憤慨した
「今すぐダンボールへ返してこい!」
社長はそう言い捨てた
僕はその言葉に抑えられない気持ちが沸いてきた
「待ってください!」 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:08:00.07 ID:xRp5LgCSO
ダンボールww 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:09:39.73 ID:LzSmaR7I0
僕は思わず立ち上がってしまった
周囲の視線が僕に注がれる
「なんだね君」
「え、えっと……その……」
僕はしんのすけに視線をやった
しんのすけは確かに馬鹿だ
しかし、僕は思った
どんなに笑われても、貶されても、しんのすけは決して物怖じしない
僕に足りないのはそこだ
そのことに気付かせてくれたしんのすけ
僕はしんのすけなんかに借りを作りたくない
きっちり返してやる
「いくらなんでも、それは言いすぎじゃありませんか!」 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:14:27.98 ID:LzSmaR7I0
「なーにを言う、我が社はエリートの集まりだ。低脳が最終面接に来てもらっちゃこまるのだよ」
「僕が社会人として以前に必要な事、それは人を思いやる事です」
僕のその言葉に、社長は鼻で笑ってみせた
「社長!僕は失望した!」
僕は社長へ歩み寄る 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:16:59.42 ID:LzSmaR7I0
「風間君!大人気ないぞ!」
「……え」
僕はしんのすけの声にふと我に返った 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:22:18.62 ID:LzSmaR7I0
「最後の最後に的確な答えだ低能君。」
社長は笑った
「いいかね君、この社会は強いものが生き残るのだよ。弱肉強食だ。
私の会社に弱者はいらん。弱者を食して生きるのが我等だ」
社長は手元の資料を見ながら言う
「ほう、君は学歴は立派なものがあるようだ。しかし残念だ」
僕はその場に固まった
「君は弱者だよ」
僕等はその場から追い出された
肩を落としエレベーターへ向かう
「風間君、次があるって」
「……もうないんだよ」 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:24:12.28 ID:LzSmaR7I0
―――だいぶ日が暮れてしまった
僕等は帰りの電車に乗っていた
「風間君、元気出してよー」
「……」
「フゥ」
「ああん」 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:25:21.54 ID:8nvfnb8c0
ああんwwwwww 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:26:22.46 ID:Fe8dgeyR0
相変わらず耳が弱いな風間君は 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:27:03.29 ID:LzSmaR7I0
「そうだ!風間君面白いところつれてってあげる!」
「……どこだよ」
「次の駅で降りるゾ!」
「わ、待てよしんのすけ!」
僕は今朝のように慌ててしんのすけを追いかけた
「ここだぞ」
「……ここソープじゃないか……」 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:28:13.72 ID:IFENcYsuO
ソープかよww 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:29:02.83 ID:8nvfnb8c0
しんのすけ健全すぎるwwwwwwwwwwwww 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:29:57.60 ID:LzSmaR7I0
「ただのソープじゃないゾ?ま、はいったはいった」
「あ、おいやめろって!」
僕は半ば無理やりソープへ連れて行かれてしまった
「いらっしゃいませー」
「やめろよしんのすけ!ほら、帰るぞ!」
「まーまー、ほら、ソープ嬢の写真見て見て」
「え?」
僕はデブスだらけのソープ嬢の写真を見回す 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:31:14.78 ID:LzSmaR7I0
「……って、あれは……!」
一枚だけ一際かわいくて見覚えのある顔があった
「ねねちゃん!?」 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:33:30.99 ID:LzSmaR7I0
「ね?面白いでしょ?」
「面白くなーい!」
しかし僕は気になってしまった
何故ねねちゃんがここで働いているのか
僕はねねちゃんを指名する事にした 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:34:10.33 ID:8nvfnb8c0
風間君の言葉がwwww 79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:36:05.27 ID:VtZFoLDl0
逐一セリフが矢島晶子と真柴摩利で脳内再生されるわけだが 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:38:06.20 ID:LzSmaR7I0
案内される廊下が妙に重々しい
そして僕は禁断の扉を開いた
「いらっしゃー…あ!」
「や、やあ」 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:39:38.55 ID:LzSmaR7I0
「風間君……!どうしてここに!」
「いや……ちょっと内定祝いにって思って…」
「お、おめでとう」 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/19(水) 05:43:09.87 ID:LzSmaR7I0
「ねねちゃんこそどうしてこんなところで……?」
「え、えっと……」
ねねちゃんは俯きながら言う
「私、留学がしたくって」
「留学?留学がしたいから風俗で働いてるのかい?」
「やっぱりそのほうがお金溜まるし……それまでの我慢かなって」 145 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 17:29:24.92 ID:tbuyQB7O
「ねねちゃんは嫌じゃないのかい?豚みたいなオッサン相手に」
「……お金が溜まるまでの我慢」
「ねねちゃん……」
僕は無性にねねちゃんが恋しくなった
僕はねねちゃんを抱きしめキスをした 146 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 17:35:11.89 ID:tbuyQB7O
「か、風間君……んっ……」
「ねねちゃん、俺、君の事を助けたい」
僕は風俗という割り切った感情ではない愛の営みをねねちゃんと交わした
「風間君、次オラの番」
その後、ねねちゃんはしんのすけに汚された 147 :名無しさん :2007/12/19(水) 17:38:43.64 ID:eDONyoKv
汚されたwwwwww 151 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 17:46:48.59 ID:tbuyQB7O
その日の夜、僕は自分の部屋で深くうなだれていた
(世の中何かがおかしい)
僕は風俗だってたまには行くさ
でも、ねねちゃんを見たら風俗を許せなくなった
世の中を許せなくなった
だっておかしいじゃないか
学歴社会なのに、海外で学びたいと思う人間が身体を汚される事を無理に受け入れている
僕はこんな厨2病と言われてしまいそうな考えに悩み苦しんだ 153 :名無しさん :2007/12/19(水) 17:51:02.64 ID:qjcaD9ah
たまに行くのかw 152 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 17:50:43.99 ID:tbuyQB7O
「トオルちゃん?」
「何ママ、ノックくらいしてくれなくちゃ……」
「何だか最近のトオルちゃん顔色が悪いみたいだから……心配で」
「大丈夫だよ。今日も内定ゲット確実だからね!心配しないでママ」
「それならいいんだけれど……頑張りすぎちゃだめよ」
「うん、ありがとうママ」
まず僕自身の心配が先だ
僕はそう思い直し、リクナビでまだ選考中の大手企業を検索する事にした 158 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 17:57:05.40 ID:tbuyQB7O
―――それからしばらく過ぎた
セミの鳴き声が僕には重く響く
僕は絶望に陥っていた
大手大手と選り好みし過ぎた僕の内定は未だに0
もうリクナビのエントリー出来る企業も数限られていた
(ああ、せめてユー子くらいは選択肢に入れておくべきだったか……) 159 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 18:00:34.16 ID:tbuyQB7O
将来の不安に悩まされる中でも、僕はねねちゃんとの愛を育んでいた
せめてもの力に、そう思い週1のペースで通いつめた
僕にとってそれが癒しだった
しかし、それと同時に妙に思考力が低下していくのを感じていた
(105円のパンと230円のパンを足すと…345円…あれ……?)
僕は疲れているのだろう
そう思いつつも、ねねちゃんとの営みの時だけは至福の時間であった 161 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 18:04:37.21 ID:tbuyQB7O
僕は勇気を振り絞って中小企業にエントリーしてみた
(もう僕にはここしかない……)
アットホームな社風が売りのIT企業
残業時間の欄には「定時に帰れる日もあります!」と大きく記されていた
いいんだ
気休めでも内定を貰いに行こう
僕はさっそく説明会へ参加する事にした 163 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 18:11:42.47 ID:tbuyQB7O
夏の日差しが痛いほど降り注ぐ中、僕はコナカの軽量スーツをバッチリ着込み、家を出た
やっぱり夏のネクタイは暑い
僕は憂鬱の中駅にたどり着き、電車に乗り込んだ
(涼しい……電車で面接してくれないかな……)
僕は空席をひとつ埋めると、到着駅までしばらく眠ってしまった 164 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 18:17:51.61 ID:tbuyQB7O
「次はー○○駅、○○駅」
僕は到着駅のアナウンスで目を覚ました
まだ夢見心地の僕はかすかに見た夢を覚えている
あれは確か幼稚園の頃、春日部防衛隊の夢のような気がするわけでもないと思う
僕はさっそく電車を降り、会社へ向かう
(あれ?どこだ……地図を見てもよくわからない)
僕は愕然とした
とあるビルの3階と書いてあるが、雑居ビルで溢れ返っている 165 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 18:24:41.06 ID:tbuyQB7O
(どうしよう……また遅刻しちゃうよ……)
僕がうろうろ迷っていると、突然男性に声を掛けられた
「す、すみません。あの……」
僕が振りむくと、そこには見覚えのある坊主頭が……僕にはわかった
まさお君だ 167 :名無しさん :2007/12/19(水) 18:28:47.05 ID:SN9Xvn3T
まさおキタ━━(。A。)━━ッ!!! 168 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 18:29:50.60 ID:tbuyQB7O
「まさおくん!」
「も、もしかして風間君?!」
僕は再び懐かしい顔と再開した
「どうしたのさまさお君、スーツなか着ちゃって。君もシュウカツかい?」
「う、うん……一応……」
「どうだい調子は?内定はいくつもらえたの?」
「……まだ」
「そ、そっか。じゃあ今日の場所が受かるといいね」
「う、うん……風間君はどう?」
「あ、ああ僕かい?僕なら大手からの内定が3つほどあるよ」
「やっぱりすごいなー風間君は……」 180 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 18:55:37.50 ID:tbuyQB7O
「そんなことないよー……」
「風間君は今日ドコを受けるの?」
「あ、ああ、今日は○□△研究所って所さ」
「え、それ僕も受けるところだよ?!それに全然大手じゃないんじゃない……?」
「あ、えーと…・・・やっぱり中小企業にも隠れ優良企業があると思うからさ。納得行くまで動こうと思ってね」
「やっぱり風間君はすごいなー……」
「と、ところでまさお君どうして僕に話しかけたんだい?」
「あ、そうなんだよお……なんか迷っちゃってさあ……」
そういうとまさお君は僕に地図を見せた
(な、何だ僕より全然分かりやすい地図じゃないか…というか僕の地図がおかしい) 181 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 18:57:48.30 ID:tbuyQB7O
「なーんだ。いいかい?この地図を見るとねー」
僕はまさお君に地図の見方を教えるフリをし、見事目的地にたどり着く事が出来た
「ほら、ここだよまさお君。さあいこう」
「ありがとう風間君!さー今日も頑張るぞー!」
僕等は古びた雑居ビルの階段を昇った 183 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 19:02:57.27 ID:tbuyQB7O
扉を開くと、そこはがらんどうなオフィスが広がっていた
「す、すみませーん。本日説明会に来たものですけども……」
「奥まで入ってきてー」
僕は先日ねねちゃんと愛の営みをした際に似たようなセリフを聞いた
低くしゃがれたオッサンの声は僕の思い出を崩した
「失礼します」
僕は奥へと向かった 185 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 19:06:38.35 ID:tbuyQB7O
「ま、まってよ風間君」
小さな声でまさお君はそう言い、僕の後を付いてきた
「いらっしゃい。じゃあ、そこに腰掛けたまえ」
頭がハゲチラかされた中年男性がそこにはいた
僕等は指示通り向かいのソファへ腰を掛ける
「じゃあ、まず仕事の説明をするからよく聞いていてね」
(いきなり過ぎやしないか……) 189 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 19:12:01.12 ID:tbuyQB7O
「まず私達は他の中小企業から仕事を請け負い……」
とにかく仕事を請け負ってshineを派遣する事でなりたっているらしい
「仕事は派遣先の状況によって定時で返れる場合もあります」
(なるほど……)
「この説明を聞いてどう思いましたか?」
「すごく……みなさん一生懸命だと」
「よろしい、お二人とも合格です」 192 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 19:17:57.24 ID:tbuyQB7O
「え?!」
「あなた達ならきっと私達とうまくやってけるでしょう。合格です」
「あ、ありがとうございます!」
といいつつ、僕は内心複雑であった
このシュウカツ地獄から開放される
しかし、こんな都合のいい話があるわけがない
まさお君は隣で歓喜の涙を零していた 197 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 19:25:05.42 ID:tbuyQB7O
「多くの企業が早い段階から研修を行っていますが、私達は来年3月までは特に研修を行いません
それまで自由に学生生活を過ごしてくださいね」
僕等は1時間余りで決まった内定に複雑な喜びを感じ、荒ぶる鷹のポーズを決めてしまいたい程であった
「まさお君、よかったじゃないか。これでとりあえず内定をもらえたね」
「うん、、うん、、、でも僕風間君みたいにもっともっと頑張るよ、、、」
「はは……」
僕等はその日少しだけ気が楽になった
そして僕等は再びの再開を信じ別れた 201 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 19:32:33.49 ID:tbuyQB7O
―――そしてあっという間に時は過ぎ……
僕は卒業を迎えた
結局僕はあれからシュウカツを再開する事はなかった
卒論とバイトに明け暮れ、ねねちゃんに貢ぎ続けた
僕は疲れきり、完全燃焼状態に陥ってしまったのだ
(正直不安だ……でもまさお君もいる。僕は一人じゃない) 204 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 19:38:07.06 ID:tbuyQB7O
三月も半ばに差し掛かった頃、とうとう僕等の研修が始まった
「では今日から研修が始まるわけだが、よろしいかね風間」
「は、はい……あの、質問してもよろしいでしょうか」
「なんだね」
「あの…あの、坊主頭の子はどうしたのでしょうか……?」
「ああ、あの子なら最終まで進んでたとあるユー子に内定が出たらしく、辞退しやがったよ」
「え…」 205 :名無しさん :2007/12/19(水) 19:40:43.03 ID:ESVHca2Y
風間君涙目www 206 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 19:42:47.57 ID:tbuyQB7O
「残念な事に他の内定者も辞退しやがってしまった。つまり、本年度の内定は君だけなんだ」
「そ、そんなあ……」
僕の不安は突然大きくなり始めた
「研修と言っても簡単な事だ。おい君、彼を研修場に案内しろ」
「カシコマリマシタ……」
(なんだこの人……目が死んでる……) 208 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 19:47:25.28 ID:tbuyQB7O
それから僕は研修場という名の実戦に放り込まれた
「何でそんな事もできない!」
僕に新人という立場はなかった
今まで通り僕に期待されていたのは即戦力-エリート-としての力であった
だけど、僕にとってこんなに理不尽な事はなかった
(眠い……もう珈琲120杯目だ……おしっこしよう……あ、変な方向に……) 209 :名無しさん :2007/12/19(水) 19:50:25.01 ID:ESVHca2Y
120杯www
ほどほどにしとけ 210 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 19:51:48.08 ID:tbuyQB7O
気付けば僕は研修場に寝泊りするようになっていた
1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月
確かに外で野ざらしにされて寝るよりはマシだ
しかし気付いたんだ
自分の家に帰れないという事は、外で寝ている事とさほど変わらないんだと
そんなニートのようなホームシックにかかった僕は、徐々に精神的にも限界が近づいていた 213 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 19:56:30.76 ID:tbuyQB7O
気付けば僕は精神的に病んでいた
思考力の低下、妙に涙が出る、なんだか視界がせまく感じる
ねねちゃんは元気かな
まさお君、どうしてなんだい
しんの……す……け……… 215 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 20:01:30.98 ID:tbuyQB7O
気付くと僕は病院にいた
「トオルちゃん……!」
目が覚めるとそこにはママが涙を浮かべていた
「マ……マ」
ママは僕を強く抱擁した
「ママ……苦しいよ……」
どうやら僕は倒れてしまっていたようだ
会社にいた時よりも気は楽になった
だけど、どうも頭の中はぼんやりしたままだ
「ママ……僕疲れたよ……少しだけ休んでもいいかな……」 219 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 20:09:23.06 ID:tbuyQB7O
僕はそれからしばらくの間休養した
晴れた日は一人で散歩に出かけた
空を見上げると大きな雲がゆっくりと進んでいる
(あんなに忙しかったのに、なんだかうらやましいな。僕も雲になりたい)
そんな厨2病のような思いを巡らせた
道端に咲いている小さな花も
ただ漂うように飛んでいる蝶も←なんか言いにくい
ただそこでゆったりと自分を生きている
僕はそう感じた 223 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 20:12:54.36 ID:tbuyQB7O
そんな僕にもとうとう復帰する日がやってきた
僕は急いで着替え駅へ向かう
(……あれ、どうしたんだろう僕)
僕の足は駅へ踏み入る事を拒んだ
不思議と涙が流れてくる
(こ……怖いよ……ママ……) 224 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 20:17:25.55 ID:tbuyQB7O
僕は何かに追われるかのように家へ舞い戻った
―――そして僕は現在にいたった 225 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 20:21:44.54 ID:tbuyQB7O
こうして僕は今このキーボードを叩いている
締め切ったカーテンは僕を外の世界から遮断し、この歪んだ空間を生み出している
「トオルちゃん、ねえ、お話があるの」
再びママがドアの前へやってきた 226 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 20:24:16.49 ID:tbuyQB7O
「病院、行きましょ」
「……」
僕は一瞬ためらった
ニートじゃないけど病気でもない
でも、もしも僕を元に戻してくれる魔法のようなクスリがあったとしたら……
僕は2次元的な閃きに妙な希望を感じた
もう、そう思うしかなかった 230 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 20:30:55.62 ID:tbuyQB7O
僕は少しだけ返事をするのを待った
僕は黒いパーカーを着込み、ニット帽を少しだけ深く被った
「わかった……ママ、今いくね」
僕はゆっくりと扉を開いた
「トオルちゃん……変わってしまったわね……」
僕は俯いたまま沈黙した
僕はママの顔を見ることはできなかった 233 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 20:36:01.30 ID:tbuyQB7O
僕はママの運転でとある病院へ向かった
「トオルちゃん、この病院にはとても評判の高い先生がいらっしゃるらしいの」
「……そうなんだ」
ママは手馴れた手つきで駐車をする
「さ、行きましょうトオルちゃん」
「……うん」 236 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 20:40:20.35 ID:tbuyQB7O
静まり返った院内はいつか見たホラー映画のような雰囲気があった
それとも僕の先入観によるフィルタが掛かっているのだろうか
そんな事を考える自分にすぐ疲れてしまった
「トオルちゃん、なんだかすぐに見てくれるみたいよ」
「……」
ママは僕の手を取って、せかすように診療室へと早足で向かった
「大丈夫、大丈夫よトオルちゃん」 239 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 20:44:18.85 ID:tbuyQB7O
薄暗い廊下から、ママは診療室の扉を開いた
廊下からは少しまぶしかった
「どーぞ」
「ほら、トオルちゃん」
「……うん」
僕はゆっくりと入る
座っている先生がこちらを振り返った
見覚えのある顔だ
「……ぼー……ちゃん?」
「どーぞ、座ってください」 241 :名無しさん :2007/12/19(水) 20:44:56.21 ID:ESVHca2Y
ボーちゃんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!! 244 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 20:49:10.87 ID:tbuyQB7O
ぼーちゃんは相変わらず鼻水をたらしていた
慢性的な鼻炎なのだろう
なぜか僕がぼーちゃんの症状を分析している間に、ママはぼーちゃんに僕について告げた
「御願いです!トオルちゃんを助けてあげてください!」
「わかりました。いい薬があります」
「本当に?!」 247 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 20:58:08.57 ID:tbuyQB7O
ぼーちゃんはゆっくりと立ち上がり、戸棚を開けると一粒の錠剤を手にした
「これ、とてもよく効きます。だけど、覚悟が必要」
「……覚悟?」
ママはぼーちゃんに問う。
「説明書入れておきます。これは本人だけが読んでください」
「トオルちゃんは、治るんですか?!」
「きっと、トオル君なら大丈夫」
「ありがとうございます!」 251 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 21:01:42.71 ID:tbuyQB7O
―――その日の夜、僕はリビングでママと食事をした
久しぶりの団欒だった
会話はなかったけれど、少しだけ楽しかった
「トオルちゃん、ご飯を食べたらお薬飲むのよ」
「……うん、分かったよママ」
僕はコップ一杯水を汲むと、自分の部屋へと戻った
僕はベッドに腰を掛けると、昼間もらった薬の封を開けた
(どれどれ、いったいどんな覚悟がいるんだ……?) 254 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 21:06:18.02 ID:tbuyQB7O
-説明書-
このクスリには「覚悟」が必要です
一粒飲めばあなたは今までの人生をやり直す事が出来るでしょう
しかし、あなたが目的を忘れてしまった場合、あなたはそこで止まってしまうので注意してください
(なんだこれ……人生をやり直す事が出来るなんて、そんな馬鹿な) 256 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 21:09:50.82 ID:tbuyQB7O
いったいなんのクスリだろう
僕は疑問に思いクスリの入っている紙袋を見てみる
そこには睡眠薬とだけ書かれていた
(よく眠れるって事か……?)
僕は思い切ってそのクスリを飲んでみる事にした
錠剤の中には粉末ではなく不思議な液体が詰まっていた
(本当に魔法のクスリだったりして)
僕は錠剤を口に含むと、すぐに水を流し込んだ 258 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 21:10:49.48 ID:tbuyQB7O
しばらくするとすぐにその睡眠薬は効果を発揮し始めた
(結構きついぞこれ……)
僕は目の前が歪み始め、そしてそのまま倒れこんだ 259 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 21:13:47.96 ID:tbuyQB7O
―――(なんだか……まぶしいぞ……)
僕の眠い瞼に光が差し込んでいる
ゆっくりと目を開くと、カーテンが開いていて、朝日が差し込んでいた
(あれ……僕カーテンなんか開けたっけ……)
外からは雀の泣き声が聞こえる
(まぶしいよ……)
僕はカーテンを閉めようといつものように手を伸ばした
しかし、妙にカーテンが遠い
(あれ……なんだこの感覚……) 261 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 21:16:47.77 ID:tbuyQB7O
「トオルちゃーん、朝ごはんできたわよー早く起きなさーい」
キッチンからはママの声が聞こえる
妙に元気だ
昨日良い薬をもらえたからだろうか
「はーい、今いくー」
(あれ……?)
僕ははっとした
僕の声が妙に高い
慌てて洗面所へ向かい、鏡を見る
(え……?)
「ほら、トオルちゃんご飯よ」
ママは僕を抱えた
「……ママ」
「ん?どうしたのトオルちゃん」
「……ううん!」 265 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 21:18:28.23 ID:tbuyQB7O
僕は悟った
これが人生をやり直すという事なのだと
僕はゆっくりと目を閉じて誓った
(今度は失敗しないように)
Fin 268 :名無しさん :2007/12/19(水) 21:20:36.21 ID:???
無限ループって奴か
乙 269 :名無しさん :2007/12/19(水) 21:20:43.04 ID:hvI0seT4
GJ 270 :名無しさん :2007/12/19(水) 21:20:44.20 ID:tVcCs6ps
>>1乙 273 :1 ◆knWoVPlwUI :2007/12/19(水) 21:21:56.19 ID:tbuyQB7O
色々と書いて薬って何だったんだとかあとがきしようとも思うけど、みんなの妄想に任せる
gdgdだから逆に色々と妄想してくれると嬉しンコ
失敗なんて哀しい事言うな
お前はいけ好かないキャラだろ?弱音吐くんじゃねええええ
・・・しかしぼーちゃん大物